スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告  --.--.--

踊る指先のアラベスク

CoM0 TrB0

まだ成人式の余韻が抜けきってないよこやまさんですよ。
今日はレポートやる前の現実逃避で書いてるよ。
いや違う、ちょっと気分転換して頭の中を整理しているんだ。そうなんだ。

何か、中学時代の友人たちのビフォーアフターを思い出すたびに、何とも
不思議な気分になるなぁ。
はぁ。



高校受験の際、よこやまさんを除く友人たちは皆、実業科や専門科をその
進路に選びました。
その中に、ある公立高校の音楽科に推薦で合格した友人がいました。彼女は、
家がピアノ教室を営んでいるということもあり、ピアノがとても上手でした。
その腕前がどれほどのものなのか。
彼女と同じく三歳からピアノを習い始め、三年かけてドの位置を覚えられずリタイア
したよこやまさんには、今もって見当がつきません。
そして、自らの意思ではじめた訳ではないピアノを、彼女が本当に好いているのか、
それすらも本当は量りかねていました。

ただとにかく、彼女の指は際限なく音を運んでいました。
ピアノを弾く時の彼女の指は、その体とは切り離された別の生き物であるように
見えました。
憂いに沈む貴婦人の横顔のように、
青草を撫でてゆく風のように、
高みをめざして滑空する鳥のように、
しなやかに駆ける駿馬のように、
あるいはもっと別の、何かとてもとうといもののように、

彼女の指は鍵盤の上を踊っていました。

音楽科の推薦入試が近づく頃、
彼女はいつも放課後に音楽室でピアノの練習を
していました。放課後にお喋りをするのが日課だったよこやまさんと友人たちは、
よく音楽室の隅で彼女の練習が終わるのを待っていました。
推薦入試は年内に結果がでるため、三月の一般入試までは随分と時間があり
ました。私たちは、中学生活の最後を生き急ぐように、その時間を楽しんでいました。
古い校舎を橙に染め上げる夕日が、窓から床に投げかけられて、どこか禍々しい
夕暮れ。窓のむこうには、高く伸びたフェニックスの枝影が、黒々と羽を広げた烏の
ように立っていました。
十一月に入り、彼女の練習も大詰めを迎えているようでした。もうすっかり弾きなれた
練習曲を繰り返すだけの単調な練習にも、その終わりを予感させる、ささやかな変化
が見え始めていました。


彼女はふとピアノを弾く手をとめ、伸びをしました。
あのときの練習曲は、題名こそ忘れてしまったけれど、技巧的な装飾の多い曲。
なので、彼女は時折そうやって小休止を取り、指の疲れを解しているようでした。

ひと時鍵盤から手を離した彼女は、手持ち無沙汰にまかせて、誰かの忘れ物の
楽譜に目を通し始めました。譜面台の横に置いてあったそのピアノ譜にそって、
鍵盤を三つ四つ、確かめるように叩く。鋭敏な絶対音感の眼差しが、たんたんと
響いた音の残滓を追いかけているように見えました。
それから彼女は再びピアノに向き合い、何の迷いも無く、白鍵と黒鍵の上に指を
走らせ始めました。
さっきまで単純な音の連なりだったものが、聞きなれたある一つの旋律へと急速に
収斂されてゆく。

ほろほろと零れて流れ出したその曲は、
ドビュッシーのアラベスク第一番。
そう言えば、アラベスクはバレエのポージングの名前でもある。
人間の体が表現しうる中で、最も長く、優美な曲線を描くポーズ。
窓からさした夕日で、彼女の指の影が長く伸びて見えました。

あれから六回、年が改まりました。
よこやまさんは、彼女が今も、望む望まざるに関わらずピアノを弾き続けていること
に少なからず
驚きました。今はロシアに留学して音楽を学ぶ彼女。あと何年かして
留学から帰ってきたときに、彼女は大きな舞台に立てるほどの存在になっているの
でしょうか。
そして、その時彼女はまばゆい舞台の中にいて、よこやまさんはそれを見上げる
薄暗い観客席にいるのでしょうか。
わたしたちが生き方をたがえて六年。
それだけの時間が経った今もまだ、よこやまさんは彼女のピアノが際限なく、音と、

声ならぬ声を運んでいたように思うのです。
高卒で働く友人が大半の今、よこやまさんと彼女だけが、最後のモラトリアムの中
にいます。よこやまさんはまだ、ただのよこやまさんのままです。


スポンサーサイト
日記は雑記。  2007.01.11
= Comment =
  • Name 
  • Mail 
  • Url 
  • Text
  • Pass 
  •  Secret

= Trackback =
Trackback Url » http://lt023052.blog83.fc2.com/tb.php/25-08d06ea5

プロフィール

よこやまさん。

Author:よこやまさん。
性別:女のひと
年齢:19歳13ヶ月に突入。
趣味:女子高生の制服を追求。
所属:日文専攻、合唱団ほか。
備考:香川を愛してやまない
大学生。でも今は京都暮らし。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。